季節の一枚

特別編


峠の夜汽車
峠の夜汽車 《平成30年2月下旬》
今暫く“特別編”が続きますが、今年はなるべく未公開の“新作”を紹介出来る様、“発掘”に努めたいと思っております。
北極海の海氷減少が主要因か、暖冬をもたらす気圧配置に依ると思われる異常少雪が、雪国を中心に社会問題になっている様。 我が故郷は温暖な気候で雪とはほぼ縁の無い地域ながら、それでも例年年末迄には初雪の便りがあったもの。 其れが今年は降雪が無いばかりか、気候もいつもの太平洋沿岸的“らしさ”は続かず、きりりとした大気の、鮮鋭な情景に恵まれる日々も少なく感じ、些か寂しい。
実際の所はもう彼是半年以上、各地に出向く事も無くなって、雪国の本当の実情は知り得ないのだけれど、積雪情報を時折観察しているだけでも、此の変わり様は余りに極端。 豪雪地帯の妙高や魚沼も、草津も蔵王も、スキー場営業にさえ苦慮している有り様との報で、本来はうんざりな厄介者ながら、地域の冬の経済の柱でもあり、且つ天然の水瓶でもあり、今だけでは無い問題と成りはしないかと大変気掛かりな事態だ。 写真撮影に携わる身としても、景観意識が極端に乏しい日本の雑然的風景を、一夜にして美景に変えてくれる魔法の恵み。 危機感を抱かずにはいられまい。
さて、本題の掲載作品は一昨年、早春の雪国に名残の冬景色を求め訪れた、板谷峠での印象的夜情。
昭和の世代的には“夜汽車”と言えば夜中走りづめで、彼方の土地で朝日を迎える長距離夜行列車。 風情も旅情も期待出来ない、形だけの無意味な停泊型団体周遊観覧寝台列車は増殖も、庶民に親しまれた本来の其れは経済論理で敗れ去り、最早国内では衰退しきって風前の灯火。 作中の汽車も、極ありふれた通勤通学用の地域間鈍行に過ぎない。
愚痴を言っても仕方は無い。 民意を総意と受け取る現実は冷淡だ。 何れにしても其の姿はやはり、赤いテールランプ灯る後ろ姿が似合う、侘しさの象徴的存在でもあったのだと思う。
此処も今年は茶色の地面が剥き出しだろうか? 夜汽車同様、過去の物語と成らぬ様、天に祈るばかりの日々続く。 加えて、峠の鉄路其れ自体も・・・

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